設備・保全技術

設備の点検・修理・清掃時の安全措置|運転停止と起動防止を条文で

依
依田尚人

著者・監修 ・ YDAIコンサルティング株式会社 代表

8分
目次

機械の掃除、給油、検査、修理または調整の作業を行う場合で、労働者に危険を及ぼすおそれがあるときは、機械の運転を停止しなければなりません。これは労働安全衛生規則107条1項が事業者に課している義務です。

そして運転を停止したら、そこで終わりではありません。同条2項は、起動装置に錠を掛ける、表示板を取り付けるといった措置により、作業に従事する労働者以外の者が機械を運転することを防止するよう求めています。停止と起動防止は、セットで1つの措置です。

本記事では、労働安全衛生規則の条文を一次ソースに、点検・修理・清掃時の安全措置の要件を整理します(e-Gov法令検索で条文本文を確認。安衛則は2026年8月1日施行の版、確認日2026-09-08)。

運転停止を求める2つの条文

保全作業の運転停止に関する条文は、対象によって2つに分かれています。刃部かそれ以外かで条が違うため、まずここを押さえます。

条文対象対象となる作業
安衛則107条機械(刃部を除く)掃除、給油、検査、修理、調整
安衛則108条機械の刃部掃除、検査、修理、取替え、調整

(出典: 労働安全衛生規則107条・108条・確認日2026-09-08)

安衛則107条と108条の適用範囲を示す図。刃部を除く機械は107条、刃部は108条が対象であることを対比する
安衛則107条と108条の適用範囲を示す図。刃部を除く機械は107条、刃部は108条が対象であることを対比する

作業の種類も微妙に違います。107条には給油が含まれますが、108条には含まれず、代わりに取替えが入っています。刃部の交換作業は108条の対象です。

現場で条文を引くときは、その作業が刃部に対するものかどうかを先に判断してください。

107条 — 運転停止の要件と例外

107条1項の条文は、無条件に停止を求めているわけではありません。要件と例外がセットで書かれています。

要件は「労働者に危険を及ぼすおそれのあるとき」

条文は、掃除、給油、検査、修理または調整の作業を行う場合において、労働者に危険を及ぼすおそれのあるときは、機械の運転を停止しなければならないと定めています(安衛則107条1項・確認日2026-09-08)。

つまり停止義務が発生するのは、危険を及ぼすおそれがある場合です。「給油をするときは常に運転停止が義務」という説明は条文より広く、正確ではありません。

例外は「覆いを設ける等の措置」

ただし書きも重要です。機械の運転中に作業を行わなければならない場合において、危険な箇所に覆いを設ける等の措置を講じたときは、この限りでないとされています(同項ただし書・確認日2026-09-08)。

運転中の作業が許されるのは、この2つの条件が揃ったときです。運転中に作業する必要があること、そして危険箇所に措置を講じたこと。どちらか一方だけでは例外に当たりません。

107条1項の判断フロー図。危険のおそれの有無、運転中作業の必要性、覆い等の措置の有無で停止義務の適用を分岐させる
107条1項の判断フロー図。危険のおそれの有無、運転中作業の必要性、覆い等の措置の有無で停止義務の適用を分岐させる

起動防止 — 停止だけでは足りない

条文が2項を置いていることには理由があります。停止した機械が第三者に動かされる事故を防ぐためです。

107条2項は、前項の規定により機械の運転を停止したときは、当該機械の起動装置に錠を掛け、起動装置に表示板を取り付ける等、同項の作業に従事する労働者以外の者が当該機械を運転することを防止するための措置を講じなければならないと定めています(確認日2026-09-08)。

条文が例示しているのは「錠を掛ける」と「表示板を取り付ける」の2つです。末尾が「等」であるため、同等の効果を持つ措置であれば他の方法も含まれ得ますが、条文上の明示はこの2つです。

108条2項にも同じ趣旨の規定があります(確認日2026-09-08)。刃部の作業でも、停止と起動防止はセットです。

起動防止措置を示す図。起動装置への施錠と表示板の取り付けにより、作業者以外の運転を防止する構造を表す
起動防止措置を示す図。起動装置への施錠と表示板の取り付けにより、作業者以外の運転を防止する構造を表す

実務で問題になりやすいのは、停止の操作をした人と、盤の前にいる人が違う場合です。条文が防ごうとしているのはまさにこの状況で、「作業に従事する労働者以外の者」が運転することを止める措置が求められています。

108条 — 刃部の作業に固有の規定

刃部の作業には、107条にない規定が2つあります。

例外の書き方が違う

108条1項は、機械の刃部の掃除、検査、修理、取替えまたは調整の作業を行うときは、機械の運転を停止しなければならないと定め、ただし書きで「機械の構造上労働者に危険を及ぼすおそれのないときは、この限りでない」としています(確認日2026-09-08)。

107条の例外が「覆いを設ける等の措置を講じたとき」であるのに対し、108条の例外は「機械の構造上危険のおそれがないとき」です。措置を追加して例外にできる107条と、機械の構造そのものを要件とする108条では、例外の作り方が違います。

切粉払い・切削剤に用具の使用義務がある

108条3項は、運転中の機械の刃部において切粉払いをし、または切削剤を使用するときは、労働者にブラシその他の適当な用具を使用させなければならないと定めています。そして4項で、労働者は用具の使用を命じられたときはこれを使用しなければならないとしています(確認日2026-09-08)。

事業者の義務と労働者の義務が両方書かれている点が特徴です。手で払う運用を続けている現場では、条文上の根拠が明確にある改善項目になります。

108条の構造図。刃部の作業の停止義務、構造上の例外、切粉払い時の用具使用義務を並べて示す
108条の構造図。刃部の作業の停止義務、構造上の例外、切粉払い時の用具使用義務を並べて示す

手順書に落とすときの観点

条文を現場の手順に落とすときは、次の順で整理すると漏れが出にくくなります。

第一に、対象の切り分けです。その作業が刃部に対するものか、それ以外かで適用条文が変わります。

第二に、停止か運転中かの判断根拠です。運転中に行うなら、なぜ運転中でなければならないのか、危険箇所にどの措置を講じたのかを手順書に書き残します。

第三に、起動防止の具体的な方法です。誰が施錠し、鍵を誰が保持し、どの表示板をどこに取り付けるかまで決めておくと、条文の「作業に従事する労働者以外の者が運転することを防止する」という目的が実際に果たされます。

第四に、複数人・複数班が同じ設備に入る場合の扱いです。条文は運転を防止する措置を求めていますが、その具体的な方法は現場の構成によって変わります。

手順書に落とす4観点の図。対象条文の切り分け、停止か運転中かの判断根拠、起動防止の具体化、複数人作業時の扱いを示す
手順書に落とす4観点の図。対象条文の切り分け、停止か運転中かの判断根拠、起動防止の具体化、複数人作業時の扱いを示す

なお本記事は条文の一般的な解説です。個別の設備や作業が条文のどれに当たるかの判断は、所轄の労働基準監督署や専門家にご確認ください。

保全方式の設計とも関係します。状態を測って劣化を早めに拾う運用にすると、突発対応として運転中に手を入れる場面を減らせます。保全方式の分類は予防保全・事後保全・予知保全・TPMの違いの記事で整理しています。

まとめ

機械の掃除・給油・検査・修理・調整の作業では、労働者に危険を及ぼすおそれがあるときに運転停止が義務となり、停止したら施錠や表示板による起動防止措置までがセットです(安衛則107条1項・2項)。

刃部の作業は108条が対象で、例外の要件が「機械の構造上危険のおそれがないとき」と異なり、切粉払い・切削剤使用時の用具使用義務も置かれています。手順書に落とすときは、対象条文の切り分けと起動防止の具体化を先に決めてください。

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よくある質問

Q. 給油のときは必ず運転を止めなければいけませんか
条文の要件は「労働者に危険を及ぼすおそれのあるとき」です(安衛則107条1項・確認日2026-09-08)。おそれがある場合に停止義務が生じます。運転中に作業を行わなければならず、かつ危険な箇所に覆いを設ける等の措置を講じたときは、ただし書きの例外に当たります。
Q. 停止した後に何をすればよいですか
起動装置に錠を掛ける、起動装置に表示板を取り付ける等、作業に従事する労働者以外の者がその機械を運転することを防止するための措置を講じる必要があります(安衛則107条2項・確認日2026-09-08)。刃部の作業でも同趣旨の規定が108条2項にあります。
Q. 刃部の作業は別の条文なのですか
はい。刃部の掃除、検査、修理、取替えまたは調整の作業は安衛則108条が対象で、刃部を除く機械の掃除、給油、検査、修理または調整の作業は107条が対象です(確認日2026-09-08)。例外の書き方も異なります。
Q. 運転中に切粉を払うときの決まりはありますか
運転中の機械の刃部で切粉払いをし、または切削剤を使用するときは、労働者にブラシその他の適当な用具を使用させなければならないとされています。労働者側にも、命じられたときは使用する義務があります(安衛則108条3項・4項・確認日2026-09-08)。

出典

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