なぜなぜ分析を設備保全でどう使うか|故障履歴から問いを立てる
著者・監修 ・ YDAIコンサルティング株式会社 代表
目次
設備保全でなぜなぜ分析を使うときは、問いを重ねる前に、故障履歴にある事実、対象部品の機能、確認した資料を分けることが出発点です。なぜなぜ分析は、原因を一つに決めるためではなく、確認すべき情報を順に言葉にする記録の方法です。問いと根拠を同一の行に置くと、後から検討の過程を追えます。
「なぜを繰り返すほど推測が増えてしまう」と感じる場合は、各問いに対応する事実の欄を作ります。記録にないことは仮説として分け、次に確認する資料を一つ選びます。問いの数を増やすより、根拠の所在を明確にする方が履歴を使いやすくします。
本記事は、なぜなぜ分析を設備保全の故障履歴と結び、事実、問い、根拠、確認事項を整理する方法をまとめます。個別の故障原因や対策の正解を一般化せず、対象設備の記録を確認する順序に焦点を当てます。
本記事で分かること
- なぜなぜ分析の前に整理する故障履歴
- 問いと根拠を一行で残す方法
- 仮説と確認事項を分ける考え方
結論:なぜなぜ分析の記録(早見表)
なぜなぜ分析の記録は、現象、対象部品、問い、根拠、次の確認を順に結ぶ整理です。故障日、故障内容、点検記録などの事実から始めると、問いが思い込みに寄りにくくなります。機械保全技能士の全体像は、部品の役割を確認する入口になります。
| 記録の欄 | 残す内容 | 参照先 |
|---|---|---|
| 現象 | 故障履歴の事実 | 故障履歴 |
| 対象 | 歯車や軸受の機能 | 設備台帳 |
| 問い | 次に確かめること | 分析記録 |
| 根拠 | 確認した資料 | 点検記録 |

問いの前に事実を一行にする
最初の一行には、故障履歴や点検記録で確認できる事実を書きます。 国土交通省の施設管理資料でも、故障日、故障内容、対策方法、点検日、点検内容、点検結果などを整理する考え方が示されています。記録の事実を起点にすると、問いの対象が明確になります。
現象と対象部品を分ける
現象欄には故障履歴や点検記録で確認した内容を記し、対象欄には歯車、軸受、ポンプ、モーターなどの部品や設備を記します。現象と対象を一つの文に混ぜると、どこまでが観察された事実かを区別しにくくなります。設備台帳の名称や機器番号を使えば、同じ部品名が複数ある場合も対象を絞れます。まず記録の事実を一行にしてから、次の問いを置きます。

時点と記録者を残す
故障履歴の事実には、発見日、記録日、参照した帳票、確認した人を添えます。記録日と発見日が異なる場合は、二つを分けて書きます。時点が分かれば、同じ設備の点検記録や保全計画を時系列でたどれます。問いを検討する前に情報の時点を確かめることが、古い記録と新しい記録を混同しないために役立ちます。
部品の機能を資料で確認する
対象部品の機能は、設備台帳、構成図、メーカー資料などを参照して記録します。歯車、軸受、メカニカルシールの名称を知っていても、どの設備のどの役割を担うかが曖昧なら、問いの方向を決めにくくなります。資料の名称と確認日を残し、事実と同じ欄に推測を混ぜません。部品の機能を確認した記録があれば、問いの根拠を後から見返せます。
問いと根拠を対にして書く
なぜという問いには、確認する根拠と次の資料を対にします。 問いだけを連ねると、どの記録を確かめたかが残りません。根拠欄を作れば、確認済みの情報と未確認の情報を分けられます。
問いは確認可能な形にする
問いは「どの記録で確認できるか」を伴う形にします。例えば歯車に関する記録なら、対象設備の点検記録、潤滑油の分析記録、軸受の履歴など、参照する資料を添えます。問いを抽象的に広げるより、確認先がある問いを一つずつ書く方が、履歴を更新しやすくなります。資料を確認した後は、結果を事実欄に追記し、問いの欄には確認日を残します。

仮説は事実と別の欄に置く
確認できた事実と、そこから考えた可能性は別の欄にします。仮説は追加の資料で変わるため、最初の観察記録を書き換える必要はありません。仮説欄には、何を確認すれば確かめられるかも添えます。情報が不足している場合は、原因の言葉で空欄を埋めず、未確認の資料や部位をそのまま残します。
同じ問いを履歴で比べる
同じ設備で似た現象があった場合は、過去の故障履歴にある問いと根拠を並べます。記録の対象、時点、部品が一致するかを確認してから比較します。別の設備の記録を参照する場合も、共通する構造と異なる条件を別欄にします。比較の目的は、過去の結論をそのまま使うことではなく、確認すべき資料を見付けることです。
次の確認を記録に戻す
なぜなぜ分析の終わりには、次に確認する資料か記録を一つ残します。 それによって、問いが推測のまま終わらず、履歴の更新につながります。2026年度の試験日程のような検定情報とは分け、対象設備の台帳と履歴を優先します。
未確認を見出しにする
未確認の資料、部品、時点は、空欄ではなく見出しとして残します。例えば「前回の点検記録を確認」「軸受の履歴を参照」のように、次の行動を記します。担当者や確認予定が決まっている場合は、対象となる記録の所在を添えます。未確認を可視化すれば、後から新しい情報が得られたときに、どの問いへ追記するかを選べます。
追加情報は確認日とともに追記する
資料を確認した後は、最初の事実や仮説を消さず、確認日と参照先を添えて追記します。記録の変化が分かれば、なぜその問いを置いたかもたどれます。個別設備の故障原因や対策は、対象設備のメーカー資料、社内基準、履歴を確認して判断します。機械保全技能士の全体像は用語の整理に役立ちますが、設備固有の判断を置き換えるものではありません。

記録の粒度をそろえる
問いの深さが行ごとに大きく違うと、履歴を比較しにくくなります。現象、対象、問い、根拠、次の確認という見出しを固定し、一行に一つの確認事項を置きます。長い説明は参照資料へ分け、表には何を確認したかを短く書きます。粒度がそろえば、同じ設備の記録を増やしたときも、情報の不足を見付けやすくなります。

問いの更新履歴を残す
なぜなぜ分析の問いに新しい情報を加えるときは、最初に置いた現象、対象部品、根拠、確認事項を消さず、資料名と確認日を添えて追記します。歯車、軸受、ポンプなどの対象を設備台帳の識別子で固定すれば、別の設備の履歴と混ざりません。確認できた事実と、考えた可能性は別欄に保ちます。
問いが変わった場合も、以前の問いを消さず、どの資料を確認して更新したかを書きます。故障履歴や点検記録に追加があれば、どの時点の記録を参照したかを残します。更新過程をたどれれば、問いを置いた理由と次に確認すべき情報を後から読み返せます。
参照先を一覧にする
なぜなぜ分析で使う資料は、設備台帳、構成図、故障履歴、点検記録、保全計画、メーカー資料などに分かれることがあります。資料名、対象設備、記録日、確認日、保存場所を一覧にし、問いごとにどの資料を参照するかを示します。見付からない資料は空欄にせず、未確認として残します。
一覧の目的は、原因を早く一つに決めることではありません。確認できる事実と不足している情報を分け、次の問いを確認可能な形にすることです。参照先が整っていれば、別の人が同じ履歴を読むときにも、どの根拠から確かめるかを共有できます。
問いの粒度をそろえる
一行に置く問いは、対象部品、時点、参照する資料が分かる大きさにします。問いが広過ぎると、どの記録を読めば確認できるかが不明瞭になります。現象、対象、問い、根拠、次の確認という見出しを固定し、同じ順序で書きます。
粒度をそろえても、個別設備の原因を一般化する必要はありません。対象設備の台帳、履歴、メーカー資料、社内基準へ戻り、確認できた事実を追記します。記録の構成が整えば、未確認の項目を次の確認として管理できます。
まとめ
なぜなぜ分析は、故障履歴の事実、対象部品、問い、根拠、次の確認を分けて残すと、設備保全の記録として使いやすくなります。原因を急いで決めず、対象設備の資料を確認する順序を保つことが重要です。
技術の記事一覧では、故障履歴や保全記録に関する記事をまとめています。機械要素の確認には、機械保全技能士の全体像と1級と2級の違いも参照してください。
よくある質問
- Q. なぜなぜ分析は何から始めますか
- なぜなぜ分析は、故障履歴や点検記録にある事実を一行にするところから始めます。現象欄には確認できた内容、対象欄には設備名や歯車、軸受、ポンプなどの部品、時点欄には発見日と記録日、根拠欄には参照した帳票を分けて書きます。最初から原因の言葉を置くのではなく、どの記録に何があったかを固定し、その後にどの資料で確認できるかを伴う問いを一つ書きます。事実、問い、仮説、未確認を別欄にすれば、後から資料を確認したときにも履歴を更新しやすくなります。
- Q. なぜを何回繰り返せばよいですか
- 問いの回数を決めるより、各問いに確認できる根拠と次の資料があるかを確かめることが重要です。問いだけを増やすと、記録にない内容が推測として重なりやすくなります。現象、対象、問い、根拠、次の確認という見出しを固定し、一行に一つの確認事項を置きます。確認済みの資料から得た事実は事実欄へ追記し、考えた可能性は仮説欄に残し、情報が不足している場合は、原因を決めるのではなく、確認する資料や部品を未確認欄に記録してください。
- Q. 過去の故障履歴はそのまま使えますか
- 過去の故障履歴は、同じ設備や似た部品について確認すべき資料を探す手掛かりとして使えますが、過去の結論を別の現象へそのまま当てはめることはできません。比較する前に、対象設備、部品、時点、構成、点検記録の条件が一致するかを確認します。共通する情報と異なる情報を別欄に残し、対象設備の台帳、メーカー資料、社内基準、現在の故障履歴へ戻ります。履歴を使う目的は原因を早く決めることではなく、確認すべき根拠を順に探し、事実と仮説を分けながら記録を更新することです。
出典
本記事の出典は に内容を確認しています。
- 1.参考資料Ⅳ 処理場・ポンプ場施設のストックマネジメント|国土交通省(mlit.go.jp)
- 2.