FMEAを設備保全で使う方法|故障モードを記録で整理する
著者・監修 ・ YDAIコンサルティング株式会社 代表
目次
設備保全でFMEAを使うときは、故障モードの名前から書き始めるのではなく、対象設備の機能、部品、想定する状態、記録の根拠を順に整理することが出発点です。FMEAは、故障モード、影響、発生、検出を同一の表で確認するための記録の枠組みです。点数だけを先に決めず、各列が何を表すかを共有します。
「評価表を作ったが、点数の意味が人によって違う」と感じる場合は、評価軸の定義と根拠の欄を分けます。国土交通省の施設管理資料でも、影響度や発生確率の検討と、故障履歴、点検履歴を整理する考え方が示されています。対象設備の記録を使うことで、表の各行を具体的に確認できます。
本記事は、FMEAを設備保全の記録として扱い、列構成、評価軸、根拠の残し方を整理します。点数基準とRPNのしきい値は、対象設備で使う定義表と社内基準で確認します。
本記事で分かること
- FMEAの表に置く基本的な列
- 発生、影響、検出を分ける考え方
- 点数の根拠を履歴と結ぶ方法
結論:FMEAの記録構成(早見表)
FMEAの記録は、対象、機能、故障モード、影響、発生、検出、根拠を一行で結ぶ整理です。各列の意味を先に定め、故障履歴や点検記録に戻れる参照先を残します。機械保全技能士の全体像は、機械要素を整理する入口になります。
| 列 | 整理する内容 | 根拠の例 |
|---|---|---|
| 対象・機能 | ポンプや軸受の役割 | 設備台帳 |
| 故障モード | 想定する状態 | 故障履歴 |
| 影響 | 機能への影響 | 記録・図面 |
| 発生・検出 | 起こりやすさと見付け方 | 点検記録 |

まず対象と機能を固定する
対象設備の機能が曖昧なままでは、故障モードの行を比べられません。 FMEAの一行目には、設備名、部品、果たす役割を設備台帳と同じ表記で書きます。ポンプ、軸受、歯車、制御盤など、対象の単位をそろえることで、故障履歴と結びやすくなります。
設備と部品を分けて書く
対象欄には設備名、部品欄には軸受や歯車などの要素を分けて書きます。設備の機能と部品の働きを一つにまとめると、どの行が何を対象にするかが不明瞭になります。設備台帳の番号、構成図、点検記録の見出しを参照先にすると、記録の対象を確認できます。行の粒度をそろえることが、表を見返す際の基本になります。

故障モードは観察語と結ぶ
故障モード欄には、対象部品で想定する状態を記します。言葉だけで決めず、故障履歴や点検記録で使われた観察語に参照先を結びます。一般社団法人 日本保全学会の「JSM-MSP-001 原子力発電所の保全活動を適正化するために必要な基本的事項とその解説」では、FMEAを故障モード影響解析として保全の検討に用いる考え方が紹介されています。表の言葉と現場の記録がつながれば、行を追加した理由を後から説明しやすくなります。

影響は対象の機能に戻る
影響欄では、部品の状態が設備の機能へどう関係するかを記します。国土交通省の資料では、影響度と発生確率を検討し、故障日、故障内容、対策方法などの履歴を整理する考え方が示されています。対象設備の機能、構成、履歴を根拠として置くと、影響の言葉を抽象的にし過ぎずに済みます。別設備の評価をそのまま写すのではなく、対象の資料へ戻って確認します。
発生・影響・検出を別の評価軸にする
発生、影響、検出は、同じ意味の点数ではなく、別々に説明する評価軸です。 発生は状態の起こりやすさ、影響は機能への関係、検出は記録や点検で見付ける観点として定義をそろえます。数値を入れる前に、各社の用語と根拠を確認します。
発生の根拠を履歴に結ぶ
発生の欄には、故障履歴、点検記録、保全計画など、確認した資料を参照先として残します。記録が少ない場合は、推測で点数を埋めず、情報が不足していることを明示します。国土交通省の資料でも、発生確率の検討に必要な情報として経過年数や健全度などを整理する考え方が示されています。対象設備の情報が増えれば、根拠欄を更新できます。

検出は確認手段を記録する
検出の欄には、どの点検記録、測定記録、設備台帳を確認するかを記します。検出の評価は、何を使って確認するかという記録上の観点を明らかにするための列です。超音波、サーモグラフィ、目視などの記録を挙げる場合は、個別の精度やしきい値を対象設備の資料で確認します。対象設備で使う記録の参照先を残し、誰が読んでも確認先が分かる形にします。
点数の前に根拠を残す
点数基準とRPNのしきい値は各社が定めるものであり、共通の数値を置くものではありません。 表の目的は、数値そのものではなく、どの資料を根拠に発生、影響、検出を整理したかを共有することです。2026年度の試験日程のような検定情報とは分け、対象設備の資料に戻って確認します。
定義表を表の横に置く
FMEAの表には、発生、影響、検出の定義と、各社で定めた点数基準の参照先を添えます。行だけを見ても点数の意味が分からない場合、表の比較はできません。定義表の版と確認日を記録し、基準が変わったときにどの行に影響するかを追えるようにします。基準を使う対象設備や組織の範囲も明らかにします。
更新履歴を残す
FMEAは一度作って終わりではなく、故障履歴や点検記録を確認したときに根拠欄を更新できます。更新日、更新した列、参照した資料を残すと、どの情報が追加されたかをたどれます。最初の評価を消さず、変更の理由を追記することで、表を使う人が判断の過程を読めます。機械保全技能士の全体像は用語を学ぶ助けになりますが、設備ごとの点数基準を決める資料ではありません。

行の根拠を更新履歴に残す
FMEAの行に新しい情報を加えるときは、対象設備、部品、機能、故障モード、発生、影響、検出の各欄を消さず、参照した故障履歴や点検記録を添えて追記します。ポンプ、軸受、歯車などの対象を設備台帳の識別子で固定すると、別の設備の評価と混ざりません。記録した事実と、追加で確認する項目は別欄に保ちます。
更新日、更新した列、参照した資料名を残せば、点数や記述が変わった理由を後からたどれます。最初の行を上書きするのではなく、確認日を添えた履歴として残すことで、根拠の変化を共有できます。表の数値を比較する前に、どの資料で更新されたかを確認する習慣が必要です。
参照先を一覧にする
FMEAで使う資料は、設備台帳、構成図、故障履歴、点検記録、保全計画、各社の評価基準などに分かれます。資料名、対象設備、確認日、保存場所を一覧にし、ポンプや軸受のどの行に対応するかを示します。根拠が見付からない欄は、推測で点数を埋めず、未確認として残します。
一覧の目的は、共通のしきい値を作ることではありません。各社で定める定義表と対象設備の履歴へ戻れるようにすることです。参照先が整っていれば、FMEAを読んだ人が発生、影響、検出のどの根拠を確認するべきかを判断できます。
用語の粒度をそろえる
故障モード、影響、発生、検出の言葉は、行ごとに粒度をそろえます。ある行だけ設備全体を対象にし、別の行だけ部品を対象にすると、評価軸を比べにくくなります。対象、部品、機能の欄を分け、故障履歴や点検記録で使われている言葉へ対応させます。
用語をそろえても、個別設備の点数基準を一般化する必要はありません。各社の定義表、対象設備の資料、確認日を記録し、数値の背景を確認できるようにします。表の粒度が整えば、未確認の情報も見付けやすくなります。
まとめ
FMEAは、対象、機能、故障モード、影響、発生、検出、根拠を一行で結ぶと、設備保全の記録として使いやすくなります。点数基準とRPNのしきい値は各社で定め、根拠の履歴を残すことが重要です。
技術の記事一覧では、設備の記録と状態の整理に関する記事をまとめています。機械要素の確認には、機械保全技能士の全体像と1級と2級の違いも参照してください。
よくある質問
- Q. FMEAの表にはどの列を置きますか
- 設備保全で使うFMEAの表には、対象設備、部品、機能、故障モード、影響、発生、検出、根拠となる記録、確認日を置くと整理しやすくなります。対象と部品を分け、設備台帳の番号や構成図の参照先を添えると、どの行が何を扱うかを確認できます。故障モードは言葉だけで決めず、故障履歴や点検記録にある観察語と結びます。影響は対象設備の機能へ戻り、発生と検出はそれぞれ別の評価軸として定義し、列の意味と参照先を先にそろえることが、表を読み返す基礎になります。
- Q. 発生・影響・検出はどう違いますか
- 発生は状態が起こりやすいかを考える軸、影響はその状態が対象設備の機能へどう関係するかを考える軸、検出はどの記録や点検で確認できるかを整理する軸です。三つは同じ意味の点数ではないため、各列の定義と根拠を分けて書きます。発生には故障履歴や点検履歴、影響には設備の機能や構成図、検出には点検記録や測定記録の参照先を残します。記録が不足している場合は推測で点数を埋めず、不足している情報を明示し、対象設備ごとの資料と定義表の版、確認日も残してください。
- Q. RPNのしきい値はどう決めますか
- 点数基準とRPNのしきい値は各社が定めるものであり、共通の値は置かず、FMEAの表を使う前に発生、影響、検出の定義、点数を付ける条件、対象設備の範囲、根拠とする記録を組織内で明確にします。基準を定めた資料の名称、版、確認日を表の横に置くと、点数だけが独り歩きしにくくなります。故障履歴や点検記録が更新された場合は、最初の評価を消さず、どの列をどの資料で更新したかを残します。設備ごとの基準は、社内の管理文書と対象設備の資料を確認して運用してください。
出典
本記事の出典は に内容を確認しています。
- 1.参考資料Ⅳ 処理場・ポンプ場施設のストックマネジメント|国土交通省(mlit.go.jp)
- 2.