設備・保全技術

製造業の労働災害の実態|はさまれ・巻き込まれが死傷も死亡も最多

依
依田尚人

著者・監修 ・ YDAIコンサルティング株式会社 代表

10分
目次

令和7年の製造業では、休業4日以上の死傷者が26,371人、死亡者が115人発生しています(出典: 厚生労働省 職場のあんぜんサイト「労働災害統計」令和7年確定値・確認日2026-09-08)。事故の型別で最も多いのは、死傷では「はさまれ・巻き込まれ」の5,992人(22.7%)、死亡でも同じく「はさまれ・巻き込まれ」の47人(40.9%)です。

設備保全の現場でよく語られる「挟まれ・巻き込まれ・感電」というリスクの並びは、統計の裏づけがあります。ただし件数の多さと重さは一致しません。数が多い型と、命に関わる型は別に見る必要があります。

本記事では、厚生労働省の職場のあんぜんサイトが公表する令和7年の労働災害統計確定値(分析用Excel)を一次ソースに、製造業の実態を整理します(確認日2026-09-08)。

製造業の全体像

まず全産業と製造業の関係を押さえます。統計の死傷者数は、労働者死傷病報告から作成された休業4日以上の数値で、新型コロナウイルス感染症のり患による労働災害を除いたものです。

区分休業4日以上の死傷者数死亡者数
全産業135,333人700人
製造業26,371人(19.5%)115人(16.4%)

(出典: 厚生労働省 職場のあんぜんサイト「労働災害統計」令和7年確定値・確認日2026-09-08。製造業の値は当サイトが同統計の業種小分類76行を集計し、事故の型別の内訳合計と合計欄の一致を確認したもの) 製造業は全産業の死傷者数の約2割を占めます(出典: 同統計)。

製造業と全産業の労働災害件数を対比した図。休業4日以上の死傷者数と死亡者数について、全産業の内数として製造業の人数を示す
製造業と全産業の労働災害件数を対比した図。休業4日以上の死傷者数と死亡者数について、全産業の内数として製造業の人数を示す

ただしこれは就業者数に対する比率ではないため、業種間の危険度をそのまま比較できる数値ではありません。件数として大きな塊であること、そして自社の傾向を照らす基準として使える数値であることが、この統計を見る意味です。

もう1つ押さえておきたいのが、この統計の対象範囲です。死傷者数は労働者死傷病報告から作成された休業4日以上の数値で、新型コロナウイルス感染症のり患による労働災害は除かれています。休業3日以下の災害や、報告に至らなかった事象は含まれません。現場の実感より数字が小さく見えるとすれば、この範囲の違いが理由です。

事故の型別 — 死傷者数の内訳

製造業の死傷者数26,371人を事故の型別に見ると、次のようになります(出典: 同統計・確認日2026-09-08)。

事故の型死傷者数構成比
はさまれ・巻き込まれ5,992人22.7%
転倒5,732人21.7%
動作の反動・無理な動作3,144人11.9%
墜落・転落2,917人11.1%
切れ・こすれ2,216人8.4%
飛来・落下1,625人6.2%
高温・低温物との接触1,094人4.1%
激突1,092人4.1%
激突され1,073人4.1%
感電27人0.1%
製造業の事故の型別死傷者数の構成を示す図。はさまれ・巻き込まれと転倒が上位2つを占める内訳を表す
製造業の事故の型別死傷者数の構成を示す図。はさまれ・巻き込まれと転倒が上位2つを占める内訳を表す

上位2つで全体の4割を超えます。はさまれ・巻き込まれが最多である一方、転倒がほぼ同規模で続いている点は見落とされがちです。

転倒は「機械のリスク」として語られにくい型ですが、件数では上位です。保全作業では、通路ではない場所を歩く、工具や部材を持って移動する、油や水で濡れた床に立ち入るといった場面が日常的にあります。設備そのものの危険源を洗い出すだけでは、この型は視野に入りにくくなります。

そして感電は27人、構成比0.1%です(出典: 同統計)。設備保全のリスクとして必ず挙がる型でありながら、件数としては極めて少ない部類に入ります。この少なさをどう読むかが、次の章の論点です。

事故の型別 — 死亡者数の内訳

同じ製造業の死亡者115人を事故の型別に見ると、構成が大きく変わります(出典: 同統計・確認日2026-09-08)。

事故の型死亡者数構成比
はさまれ・巻き込まれ47人40.9%
墜落・転落28人24.3%
激突され6人5.2%
崩壊・倒壊5人4.3%
有害物との接触5人4.3%
交通事故(道路)5人4.3%
飛来・落下4人3.5%
感電3人2.6%
高温・低温物との接触3人2.6%
爆発3人2.6%
転倒0人0%
製造業の事故の型別死亡者数の構成を示す図。はさまれ・巻き込まれと墜落・転落で3分の2を占める内訳を表す
製造業の事故の型別死亡者数の構成を示す図。はさまれ・巻き込まれと墜落・転落で3分の2を占める内訳を表す

上位2つ、はさまれ・巻き込まれと墜落・転落で死亡者の65.2%を占めます(出典: 同統計)。そして死傷では2位だった転倒は、死亡では0人です。

はさまれ・巻き込まれが両方で最多である点は、この型が「件数も多く、重さも最大」という位置にあることを示しています。優先順位を1つだけ決めるなら、この型になります。

墜落・転落が死亡で2位に上がる点も特徴的です。死傷では4位(11.1%)ですが、死亡では24.3%を占めます。高所での作業は、発生すれば重い結果につながりやすい型だと読み取れます。

件数と重さは一致しない

2つの表を並べると、件数の順位と重さの順位が違うことがはっきりします。

当サイトが上記の公表値から算出した「死亡者数÷死傷者数」の比は、次のとおりです。公表値そのものではなく、当サイトが公表値を割って求めた値です。

事故の型死亡者数÷死傷者数
感電約11.1%(3人÷27人)
爆発約7.9%(3人÷38人)
有害物との接触約1.8%(5人÷283人)
崩壊・倒壊約1.1%(5人÷469人)
墜落・転落約1.0%(28人÷2,917人)
はさまれ・巻き込まれ約0.8%(47人÷5,992人)
転倒0%(0人÷5,732人)
事故の型別の件数と重さの関係を示す図。感電は件数が少ないが死亡率が高く、転倒は件数が多いが死亡はないという対比を表す
事故の型別の件数と重さの関係を示す図。感電は件数が少ないが死亡率が高く、転倒は件数が多いが死亡はないという対比を表す

感電は件数では0.1%にすぎませんが、発生すれば約11%が死亡に至っています。1件あたりの重さでは突出した型です。

一方で転倒は、件数では2位でありながら死亡は0人です。件数の多さから優先度を決めると感電の重さを取りこぼし、重さだけで決めると転倒による休業の多さを取りこぼします。両方の軸で見る必要があります。

この2つの軸は、対策の性格も分けます。件数の多い型は、日常の作業のやり方や環境を整えることで減らす対象です。重さの大きい型は、そもそも起きないよう手順と設備の側で止める対象になります。同じ「安全対策」という言葉でも、打ち手の置き場所が変わります。

なお母数が小さい型の比は、年によって振れやすい点に注意が必要です。感電の3人という死亡者数は、1人違えば比が大きく動きます。単年の値を固定的な指標として扱うのではなく、傾向を見る材料として使うのが適切です。

統計を保全の対策につなげる

この統計には「保全作業中の災害」という区分がありません。したがって設備保全に限った件数を統計から取り出すことはできず、本記事も製造業全体の数値として扱っています。

そのうえで、上位の型は保全作業と結びつきやすいものが並んでいます。はさまれ・巻き込まれについては、機械の掃除、給油、検査、修理または調整の作業で労働者に危険を及ぼすおそれがあるときの運転停止と、停止後の起動防止措置が安衛則107条に定められています(確認日2026-09-08)。

感電については、停電作業を行うときの3措置と送電再開前の2確認が安衛則339条に、高圧の活線近接作業の距離要件が同342条に定められています(確認日2026-09-08)。件数は少なくても、条文が具体的な手順を定めている領域です。

墜落・転落については、高さ2メートル以上で作業床を設けることが困難なところでフルハーネス型の墜落制止用器具を用いて行う作業に係る業務が、安衛則36条41号の特別教育の対象とされています(確認日2026-09-08)。

統計の上位の型と対応する条文を結んだ図。はさまれ・巻き込まれと107条、感電と339条・342条、墜落・転落と36条41号の対応を示す
統計の上位の型と対応する条文を結んだ図。はさまれ・巻き込まれと107条、感電と339条・342条、墜落・転落と36条41号の対応を示す

数字を眺めるだけでは対策になりません。自社で発生している型が統計の上位と一致しているのか、それとも別の型に偏っているのかを確認し、該当する条文の措置が実際に機能しているかを点検するところまでつなげてください。個別の判断は所轄の労働基準監督署や専門家にご確認ください。

まとめ

令和7年の製造業では、休業4日以上の死傷者が26,371人、死亡者が115人でした。死傷・死亡とも「はさまれ・巻き込まれ」が最多で、死亡では墜落・転落と合わせて65.2%を占めます。

一方で件数の順位と1件あたりの重さは一致しません。転倒は件数が多くても死亡0人、感電は件数が少なくても死亡率が高い型です。統計の上位の型には、運転停止と起動防止、停電作業の措置、特別教育といった条文上の対応があります。自社の発生傾向と突き合わせて点検してください。

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よくある質問

Q. 製造業で最も多い労働災害は何ですか
令和7年の製造業では、休業4日以上の死傷者数で「はさまれ・巻き込まれ」が5,992人(22.7%)と最多で、「転倒」が5,732人(21.7%)で続きます(出典: 厚生労働省 労働災害統計 令和7年確定値・確認日2026-09-08)。
Q. 死亡災害で多いのはどの型ですか
「はさまれ・巻き込まれ」が47人(40.9%)、「墜落・転落」が28人(24.3%)で、この2つで65.2%を占めます。死傷者数で2位だった「転倒」は死亡0人です(出典: 同統計・確認日2026-09-08)。
Q. 感電は少ないから優先度は低いのですか
件数では製造業の死傷者数の0.1%(27人)ですが、死亡は3人発生しています。当サイトが公表値から算出した死亡者数÷死傷者数は約11.1%で、他の型より高い水準です(出典: 同統計から当サイト算出・確認日2026-09-08)。件数と重さは分けて見てください。
Q. 設備保全の作業中に限った件数は分かりますか
この統計に「保全作業中」という区分はありません。したがって設備保全に限定した件数を公表統計から取り出すことはできず、本記事の数値は製造業全体のものです。

出典

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