設備・保全技術

停電作業と活線近接作業の安全|安衛則339条〜347条を条文で整理

依
依田尚人

著者・監修 ・ YDAIコンサルティング株式会社 代表

9分
目次

電路を開路して電気工事の作業を行うときは、開路した後に3つの措置を講じなければなりません。開路に用いた開閉器への施錠等、残留電荷の放電、そして高圧・特別高圧であった電路については検電による停電確認と短絡接地です。労働安全衛生規則339条1項が定めています。

停電作業は「電源を切れば安全」と受け取られやすい作業ですが、条文が求めているのはそこから先です。誤通電を防ぐ措置、電荷が残る設備への放電、そして送電を再開するときの確認まで、一連の手順として規定されています。

本記事では、労働安全衛生規則の条文を一次ソースに、停電作業と活線・活線近接作業の措置を整理します(e-Gov法令検索で条文本文を確認。安衛則は2026年8月1日施行の版、確認日2026-09-08)。

停電作業で求められる3つの措置

安衛則339条1項は、電路を開路して当該電路またはその支持物の敷設、点検、修理、塗装等の電気工事の作業を行なうときは、開路した後に次の措置を講じなければならないと定めています(確認日2026-09-08)。

号措置
1号開路に用いた開閉器に、作業中、施錠し、もしくは通電禁止に関する所要事項を表示し、または監視人を置くこと
2号開路した電路が電力ケーブル、電力コンデンサー等を有する電路で、残留電荷による危険を生ずるおそれのあるものについては、安全な方法により当該残留電荷を確実に放電させること
3号開路した電路が高圧または特別高圧であつたものについては、検電器具により停電を確認し、かつ、誤通電、他の電路との混触または他の電路からの誘導による感電の危険を防止するため、短絡接地器具を用いて確実に短絡接地すること
停電作業の3措置を示す図。開閉器への施錠・表示・監視人、残留電荷の放電、検電と短絡接地の順序を表す
停電作業の3措置を示す図。開閉器への施錠・表示・監視人、残留電荷の放電、検電と短絡接地の順序を表す

1号は3つの方法が「もしくは」「または」でつながれています。施錠、通電禁止の表示、監視人の配置のいずれかを行うという構造です。

2号は対象が限定されています。電力ケーブルや電力コンデンサー等を有する電路で、残留電荷による危険を生ずるおそれのあるものが対象です。

3号は高圧または特別高圧であった電路に限られます。検電による停電確認と短絡接地の2つを行うことが求められ、その目的として誤通電、他の電路との混触、他の電路からの誘導による感電の防止が条文に明記されています。

なお同項後段は、当該電路に近接する電路もしくはその支持物の電気工事の作業、または当該電路に近接する工作物の建設、解体、点検、修理、塗装等の作業を行う場合も同様とすると定めています(確認日2026-09-08)。

送電を再開するときの2つの確認

停電作業の規定でとくに見落とされやすいのが2項です。

安衛則339条2項は、前項の作業中または作業を終了した場合において、開路した電路に通電しようとするときは、あらかじめ、当該作業に従事する労働者について感電の危険が生ずるおそれのないこと、および短絡接地器具を取りはずしたことを確認した後でなければ行なつてはならないと定めています(確認日2026-09-08)。

確認すべきことは2つです。人の安全と、短絡接地器具の取り外し。どちらか一方だけでは条文の要件を満たしません。

送電再開前の2確認を示す図。作業者の安全確認と短絡接地器具の取り外し確認を経てから通電する順序を表す
送電再開前の2確認を示す図。作業者の安全確認と短絡接地器具の取り外し確認を経てから通電する順序を表す

短絡接地器具は、安全のために取り付けたものが、そのまま送電されれば重大な事故につながる装置でもあります。取り付けと取り外しが対で管理されるべき理由が、条文の構造に表れています。

断路器等を開路するときの確認

もう1つ、開路の操作そのものに関する規定があります。

安衛則340条は、高圧または特別高圧の電路の断路器、線路開閉器等の開閉器で、負荷電流をしや断するためのものでないものを開路するときは、当該開閉器の誤操作を防止するため、当該電路が無負荷であることを示すためのパイロットランプ、当該電路の系統を判別するためのタブレット等により、当該操作を行なう労働者に当該電路が無負荷であることを確認させなければならないと定めています(確認日2026-09-08)。

ただし書きもあります。当該開閉器に、当該電路が無負荷でなければ開路することができない緊錠装置を設けるときは、この限りでないとされています(確認日2026-09-08)。

対象は「負荷電流をしや断するためのものでない」開閉器です。断路器のように、電流が流れている状態で開くことを想定していない機器が該当します。設備の構造で担保するか、確認の手順で担保するかという選択肢が条文に書かれている形です。

断路器等の開路の規定を示す図。無負荷確認の手段(パイロットランプ・タブレット)と、緊錠装置による代替を対比する
断路器等の開路の規定を示す図。無負荷確認の手段(パイロットランプ・タブレット)と、緊錠装置による代替を対比する

高圧の活線作業・活線近接作業

停電させずに作業する場合の規定も置かれています。条文は活線作業を禁止しているのではなく、措置を講じたうえで行うことを前提としています。

高圧活線作業(341条)

安衛則341条1項は、高圧の充電電路の点検、修理等当該充電電路を取り扱う作業を行なう場合において、感電の危険が生ずるおそれのあるときは、次のいずれかの措置を講じなければならないと定めています(確認日2026-09-08)。

1号は、労働者に絶縁用保護具を着用させ、かつ、当該充電電路のうち労働者が現に取り扱つている部分以外の部分で接触または接近により感電の危険が生ずるおそれのあるものに絶縁用防具を装着すること。2号は活線作業用器具を使用させること。3号は活線作業用装置を使用させることです。

2項では、労働者は絶縁用保護具の着用、絶縁用防具の装着、活線作業用器具・装置の使用を事業者から命じられたときは、これを着用し、装着し、または使用しなければならないとされています(確認日2026-09-08)。

高圧活線近接作業(342条)

安衛則342条1項は、電路またはその支持物の敷設、点検、修理、塗装等の電気工事の作業を行なう場合において、労働者が高圧の充電電路に接触し、または当該充電電路に対して頭上距離が30センチメートル以内、または躯側距離もしくは足下距離が60センチメートル以内に接近することにより感電の危険が生ずるおそれのあるときは、当該充電電路に絶縁用防具を装着しなければならないと定めています(確認日2026-09-08)。

ただし書きにより、労働者に絶縁用保護具を着用させて作業を行なう場合で、着用する身体の部分以外の部分が接触または接近することにより感電の危険が生ずるおそれのないときは、この限りでないとされています。

高圧活線近接作業の距離要件を示す図。頭上30センチメートル、躯側および足下60センチメートルの範囲を人体図で表す
高圧活線近接作業の距離要件を示す図。頭上30センチメートル、躯側および足下60センチメートルの範囲を人体図で表す

条文に距離の数値が明記されているのは、この342条です。作業計画を立てるときは、この距離を基準に近接の判定を行うことになります。

低圧の活線作業・活線近接作業

低圧についても、対応する条文があります。

安衛則346条は、低圧の充電電路の点検、修理等当該充電電路を取り扱う作業を行なう場合において、感電の危険が生ずるおそれのあるときは、当該労働者に絶縁用保護具を着用させ、または活線作業用器具を使用させなければならないと定めています(確認日2026-09-08)。

安衛則347条1項は、低圧の充電電路に近接する場所で電路またはその支持物の敷設、点検、修理、塗装等の電気工事の作業を行なう場合において、労働者が当該充電電路に接触することにより感電の危険が生ずるおそれのあるときは、当該充電電路に絶縁用防具を装着しなければならないとしています。同条2項は、絶縁用防具の装着または取りはずしの作業を労働者に行なわせるときは、絶縁用保護具を着用させ、または活線作業用器具を使用させなければならないと定めています(確認日2026-09-08)。

高圧の342条には距離の数値がありますが、低圧の347条は「接触することにより」と規定されており、条文の書き方が異なります。高圧と低圧で要件が同じではない点に注意してください。

高圧と低圧の規定の違いを示す図。高圧は距離の数値、低圧は接触という要件の違いを対比する
高圧と低圧の規定の違いを示す図。高圧は距離の数値、低圧は接触という要件の違いを対比する

なお高圧・特別高圧の充電電路またはその支持物の敷設・点検・修理・操作の業務、および低圧の充電電路の敷設・修理の業務等は、安衛則36条4号により特別教育の対象です(確認日2026-09-08)。教育の制度は保全作業に必要な特別教育・技能講習の範囲の記事で整理しています。

本記事は条文の一般的な解説です。個別の作業がどの条文に当たるかの判断は、所轄の労働基準監督署や専門家にご確認ください。

まとめ

停電作業では、開閉器への施錠等・残留電荷の放電・検電と短絡接地の3措置が安衛則339条1項に定められ、送電再開前には人の安全と短絡接地器具の取り外しの2確認が同条2項に定められています。

活線作業と活線近接作業は禁止ではなく、措置を講じたうえで行うことが前提です。高圧の近接作業には頭上30センチメートル・躯側および足下60センチメートルという距離が条文に明記されており、作業計画の基準になります。

関連記事

よくある質問

Q. 停電作業では電源を切るだけでよいですか
条文が求めているのは開路した後の措置です。開閉器への施錠・通電禁止の表示・監視人の配置のいずれか、残留電荷による危険のおそれがある電路での放電、高圧・特別高圧であった電路での検電による停電確認と短絡接地の3つが安衛則339条1項に定められています(確認日2026-09-08)。
Q. 送電を再開するときの決まりはありますか
あらかじめ、作業に従事する労働者について感電の危険が生ずるおそれのないこと、および短絡接地器具を取りはずしたことを確認した後でなければ通電してはならないとされています(安衛則339条2項・確認日2026-09-08)。
Q. 高圧の充電電路にどこまで近づけますか
安衛則342条1項は、頭上距離30センチメートル以内、または躯側距離もしくは足下距離60センチメートル以内に接近することにより感電の危険が生ずるおそれのあるときに、絶縁用防具の装着を求めています。絶縁用保護具の着用による例外がただし書きに置かれています(確認日2026-09-08)。
Q. 低圧なら措置は不要ですか
不要ではありません。低圧の充電電路を取り扱う作業には安衛則346条、近接する場所での作業には347条の規定があります。ただし条文の要件の書き方は高圧と異なります(確認日2026-09-08)。

出典

  1. 1.
  2. 2.