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冷凍機械責任者は設備保全に効くか|選任要件と冷凍能力の区分を条文で

著者・監修: 依田尚人(YDAIコンサルティング株式会社 代表)

冷凍機械責任者が設備保全で効くのは、冷凍のため高圧ガスを製造する施設について、冷凍保安規則36条1項が1日の冷凍能力に応じた免状と製造経験を持つ者から冷凍保安責任者を選任するよう定めているためです。免状の保有者が社内にいなければ、事業者はこの要求を自社で満たせません。

この資格はビルメンテナンスの文脈で語られることが多く、工場の設備保全でどう位置づくのかを条文から説明した情報は多くありません。トン数の区分だけを紹介し、根拠となる条番号や経験要件の中身に触れない解説も見かけます。

本記事では、高圧ガス保安法と冷凍保安規則の条文を一次ソースに、選任要件の構造を整理します(確認日2026-09-07。冷凍保安規則は2026年6月12日施行の改正が直近です)。

冷凍保安責任者と冷凍機械責任者免状の関係

はじめに、よく混同される2つの言葉を分けます。

冷凍保安責任者は、事業者が選任する役割の名称です。高圧ガス保安法27条の4第1項は、冷凍のためガスを圧縮し、または液化して高圧ガスの製造をする第一種製造者等に対し、事業所ごとに冷凍保安責任者を選任することを定めています(確認日2026-09-07)。省令で定める施設や小能力の施設には除外があります。

一方、冷凍機械責任者免状は、同法29条に定める製造保安責任者免状の一種です。第一種・第二種・第三種の区分があり、選任される人が持つ資格として機能します。

用語性格根拠
冷凍保安責任者事業者が選任する役割高圧ガス保安法27条の4/冷凍保安規則36条
冷凍機械責任者免状個人が取得する免状(製造保安責任者免状の一種)高圧ガス保安法29条
冷凍保安責任者と冷凍機械責任者免状の関係図。事業者が選任する役割と、個人が取得する免状という位置づけの違いを示す
冷凍保安責任者と冷凍機械責任者免状の関係図。事業者が選任する役割と、個人が取得する免状という位置づけの違いを示す

電気の世界における電気主任技術者と主任技術者免状の関係と、同じ構造です。設備を持つ事業者に選任の義務があり、その選任は免状保有者の中から行うという形になっています。

この区別ができていないと、「冷凍機械責任者を取れば選任される」という誤解が生まれます。実際には、免状を持っていることは要件の一部にすぎません。次章のとおり、選任には免状の種類に加えて製造経験の要件があり、さらにその工場の設備が選任義務の対象であることが前提になります。

なお高圧ガス保安法27条の4第1項が対象とするのは、冷凍のためガスを圧縮し、または液化して高圧ガスの製造をする第一種製造者等です(確認日2026-09-07)。冷凍設備を「使っている」ことと、法令上の「高圧ガスの製造」に当たることは同じではありません。

選任区分 — 冷凍能力・免状・製造経験の3点セット

冷凍保安規則36条1項は、1日の冷凍能力に応じて、選任できる免状の種類と必要な製造経験を定めています(確認日2026-09-07)。

1日の冷凍能力選任できる免状必要な製造経験
300トン以上第一種冷凍機械責任者1日の冷凍能力100トン以上の製造施設を使用する高圧ガスの製造に関する1年以上の経験
100トン以上300トン未満第一種または第二種1日の冷凍能力20トン以上の製造施設を使用する高圧ガスの製造に関する1年以上の経験
100トン未満第一種・第二種または第三種1日の冷凍能力3トン以上の製造施設を使用する高圧ガスの製造に関する1年以上の経験

(出典: 冷凍保安規則36条1項・確認日2026-09-07)

冷凍保安責任者の選任区分マップ。1日の冷凍能力300トン・100トンを境に、選任できる免状の種類と必要な製造経験の規模が変わることを示す
冷凍保安責任者の選任区分マップ。1日の冷凍能力300トン・100トンを境に、選任できる免状の種類と必要な製造経験の規模が変わることを示す

見落とされやすいのが経験要件です。どの区分でも「1年以上」という年数は共通ですが、経験の対象となる製造施設の規模が100トン・20トン・3トンと区分ごとに違います。「経験1年以上」とだけ覚えていると、要件を満たしているかの判断を誤ります。

つまり免状を取っただけでは選任されません。免状と、区分に応じた規模の施設での製造経験の両方が要件です。

選任の単位 — 法と省令で文言が異なる

条文を読むときに注意が要る点があります。選任の単位が、法律と省令で違う言葉で書かれています。

高圧ガス保安法27条の4第1項は「事業所ごとに」冷凍保安責任者を選任すると定めています。これを受けた冷凍保安規則36条1項は「製造施設ごとに」選任すると定めています(いずれも確認日2026-09-07)。

実務上は省令の「製造施設ごと」が具体的な単位になりますが、条文を引用して説明する場面では、この2つを混同しないようにしてください。

さらに36条1項には、みなしの特例が置かれています。2以上の製造施設が設備の配置等からみて一体として管理されるものとして設計され、かつ同一の計器室で制御されているときは、同一の製造施設とみなされます。この場合、冷凍能力が最大である製造施設の冷凍能力によって選任できます(出典: 冷凍保安規則36条1項・確認日2026-09-07)。

また認定指定設備を設置している場合、当該設備の冷凍能力は除いて計算します(出典: 同上)。

選任単位の考え方を示す図。法は事業所ごと、省令は製造施設ごとと定め、一体管理かつ同一計器室の場合は同一施設とみなす特例があることを表す
選任単位の考え方を示す図。法は事業所ごと、省令は製造施設ごとと定め、一体管理かつ同一計器室の場合は同一施設とみなす特例があることを表す

工場に複数の冷凍設備がある場合、この一体管理のみなし特例が適用されるかどうかで、必要な免状の種類が変わります。設備の配置と計器室の構成を確認せずに合計トン数だけで判断すると、実態とずれる可能性があります。

選任が要らない場合もある

冷凍設備があれば必ず冷凍保安責任者を選任しなければならない、というわけではありません。

高圧ガス保安法27条の4第1項には、省令で定める施設や小能力の施設を除く旨の規定があります。また冷凍保安規則36条2項・3項には、選任が不要となる除外の規定が置かれています(確認日2026-09-07)。

除外の具体的な条件は施設の種類や能力によって定められているため、自社設備が該当するかどうかは条文および所管の窓口で確認してください。本記事では「除外の規定が存在する」という構造までを扱います。

この点は、資格取得の判断にも関わります。自社に冷凍設備があるからといって、必ずしも選任のニーズがあるとは限りません。取得の前に、自社の設備がどの区分に当たり、そもそも選任義務の対象なのかを確認しておくと、資格の効き方を正しく見積もれます。

選任義務の該当判定フロー図。冷凍のため高圧ガスを製造する施設に当たるか、除外の規定に当たらないか、1日の冷凍能力の区分という順で判定する流れを示す
選任義務の該当判定フロー図。冷凍のため高圧ガスを製造する施設に当たるか、除外の規定に当たらないか、1日の冷凍能力の区分という順で判定する流れを示す

工場保全で効く場面

冷凍機械責任者が工場の設備保全で効く場面は、大きく2つに整理できます。

1つは、選任要件への対応です。冷凍・冷蔵設備や大型の空調設備を持つ工場では、冷凍保安責任者の選任が事業者の課題として存在します。免状を持つ保全担当者は、その課題に直接応えられる立場になります。

もう1つは、法定選任という枠組みの理解が横に広がることです。工場の設備保全では、電気・冷凍・危険物・ボイラー・エネルギー管理といった領域それぞれに、法令で選任が義務づけられる役割があります。

領域選任される役割根拠条文
電気設備電気主任技術者電気事業法43条1項
冷凍設備冷凍保安責任者高圧ガス保安法27条の4/冷凍保安規則36条

(出典: 各法令のe-Gov法令検索・確認日2026-09-07)

工場保全で効く場面を示す図。選任要件への対応と、法定選任という枠組みの理解が他領域へ広がることの2点を表す
工場保全で効く場面を示す図。選任要件への対応と、法定選任という枠組みの理解が他領域へ広がることの2点を表す

どちらも「設備を持つ事業者が有資格者を選任する」という同じ構造です。1つの領域で条文の読み方を身につけると、他の領域にも応用が利きます。電気の側の構造は設備保全に電験三種は意味がある?電気事業法の選任と実務のつながりで整理しています。

よくある質問

第三種冷凍機械責任者ではどこまで選任できますか

冷凍保安規則36条1項の区分では、1日の冷凍能力100トン未満の製造施設について、第一種・第二種または第三種の免状で選任できます。あわせて1日の冷凍能力3トン以上の製造施設を使用する高圧ガスの製造に関する1年以上の経験が必要です(確認日2026-09-07)。

免状を取れば選任されますか

免状だけでは要件を満たしません。冷凍保安規則36条1項は、免状の種類に加えて区分ごとの製造経験を求めています。経験の対象となる製造施設の規模は区分により100トン・20トン・3トンと異なります(確認日2026-09-07)。

工場に冷凍設備があれば必ず選任が必要ですか

必ずではありません。高圧ガス保安法27条の4第1項には省令で定める施設等を除く旨の規定があり、冷凍保安規則36条2項・3項にも選任が不要となる規定があります(確認日2026-09-07)。自社設備が該当するかは条文と所管窓口で確認してください。

複数の冷凍設備がある場合はどう数えますか

冷凍保安規則36条1項には、2以上の製造施設が一体として管理されるものとして設計され、かつ同一の計器室で制御されているときは同一の製造施設とみなす特例があります。この場合は冷凍能力が最大である製造施設の冷凍能力で選任できます(確認日2026-09-07)。

まとめ

冷凍機械責任者が設備保全で効く根拠は、冷凍保安規則36条1項の選任要件にあります。1日の冷凍能力300トン・100トンを境に選任できる免状の種類が分かれ、あわせて区分ごとに規模の異なる製造経験が求められます。

選任の単位は法が「事業所ごと」、省令が「製造施設ごと」と定めており、一体管理・同一計器室のみなし特例もあります。自社設備がどの区分に当たり、そもそも選任義務の対象なのかを条文で確認してから、取得の判断をしてください。

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出典

著者・監修

依田尚人YDAIコンサルティング株式会社 代表

依田尚人は YDAIコンサルティング株式会社 代表。設備保全・フィールドサービスの資格制度・公的統計・働き方について、試験実施機関・所管省庁等の公開情報を一次ソースまで確認する工程を標準として、本サイトの記事を設計・監修しています。

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