hozen-career.com
資格の実務攻略約8分で読めます

第二種電気工事士と電験三種はどちらが先か|工場保全職の取得順

著者・監修: 依田尚人(YDAIコンサルティング株式会社 代表)

工場の設備保全職であれば、第二種電気工事士を先に取り、そのうえで電験三種に進む順番が実務にも学習にも無理がありません。作業に就くための資格を先に押さえてから、設備を持つ側の義務に関わる資格へ広げる流れになるためです。

この2つは「難易度が違う同じ系統の資格」として並べられがちですが、根拠となる法律も、資格が働く場面も別です。順番を考える前に、何のための資格なのかを分けて理解しておく必要があります。

本記事では、電気工事士法と電気事業法の条文、および電気技術者試験センターの公式情報を一次ソースに、保全職の取得順を整理します(条文の確認日2026-09-05、試験情報の確認日2026-09-07)。

2つの資格は役割が違う

まず前提を揃えます。第二種電気工事士と電験三種は、法律上まったく別の仕組みです。

電気工事士は「作業に就く」ための資格

電気工事士法3条2項は、一般用電気工作物等に係る電気工事の作業について、第一種電気工事士または第二種電気工事士でなければ従事してはならないと定めています(確認日2026-09-05)。自家用電気工作物に係る電気工事は第一種電気工事士が対象で、特殊電気工事には特種電気工事資格者、簡易電気工事には認定電気工事従事者という区分があります(同法3条1項・3項・4項)。

いずれも「保安上支障がないと認められる作業であって省令で定めるもの」は除かれます(同法3条・確認日2026-09-05)。免状は都道府県知事が交付し、第二種は試験の合格者または指定養成施設の修了者等が対象です(同法4条4項)。

つまり電気工事士は、作業者本人に向けられた従事の制限です。免状がなければ、その作業に就けません。

電験三種は「選任される」ための資格

一方、電気事業法43条1項は、事業用電気工作物を設置する者に対し、工事・維持・運用に関する保安の監督をさせるため、主任技術者免状の交付を受けている者のうちから主任技術者を選任することを義務づけています(確認日2026-09-05)。第三種電気主任技術者免状は、同法44条1項3号に定める免状の1つです。

義務を負うのは設備を設置する事業者であり、作業への従事を制限する規定ではありません。

電気工事士と電気主任技術者の役割の違いを示す図。電気工事士法は作業者への従事制限、電気事業法は事業者への選任義務であることを対比する
電気工事士と電気主任技術者の役割の違いを示す図。電気工事士法は作業者への従事制限、電気事業法は事業者への選任義務であることを対比する

この違いを押さえると、「どちらが上位か」ではなく「どちらの場面が先に来るか」で順番を考えられるようになります。

試験の重さの違い

制度の違いに加えて、試験の負荷にも差があります。ここは学習計画に直結します。

第二種電気工事士の学科試験

第二種電気工事士の学科試験は、CBT方式で四肢択一式50問・120分、合格基準点は60点(50問中30問)で、配点は1問あたり2点です(出典: CBT方式のご案内・確認日2026-09-07)。第一種電気工事士の学科試験は四肢択一式50問・140分で、合格基準点は同じく60点です。

なお電気工事士試験でCBT方式の対象になっているのは学科試験です(出典: 同上)。

電験三種の試験

電験三種は科目ごとに試験が分かれます。理論・電力・機械が各90分、法規が65分で、解答方式は五肢択一です。A問題は1つの問に1つを解答し、B問題は1つの問の中の小問2つにそれぞれ解答します。合格基準は各科目原則60点です(出典: CBT方式のご案内・確認日2026-09-07)。

受験手数料はインターネット申込みで7,700円、書面申込みで8,100円です(いずれも非課税・出典: 令和8年度電気主任技術者試験の実施日程等のご案内・確認日2026-09-07)。

第二種電気工事士学科試験と電験三種の試験構成の比較図。四肢択一50問120分の単一試験と、4科目に分かれた五肢択一の構成を対比する
第二種電気工事士学科試験と電験三種の試験構成の比較図。四肢択一50問120分の単一試験と、4科目に分かれた五肢択一の構成を対比する

1つの試験で完結するか、4科目に分かれるかという構造の差は、学習計画の立て方をまったく変えます。前者は数か月単位、後者は年単位で組むことになります。

保全職に「二種電工が先」を勧める理由

以上を踏まえて、工場の設備保全職に第二種電気工事士を先に勧める理由は3つあります。

第一に、現場で最初に壁になるのが従事の制限だからです。保全作業の中に電気工事に該当する作業が含まれる場合、免状がなければその作業に就けません。日々の業務範囲を広げるうえで、先に効くのは電気工事士のほうです。

第二に、学習範囲が実物に近く、成果が早く出ます。第二種電気工事士の学科試験は四肢択一式50問の単一試験で、合格基準点も明示されています。到達点が見えやすく、交替勤務の合間でも計画を立てやすい構成です。

第三に、電気の基礎が先に固まることで、電験三種の理論科目に入りやすくなります。順番を逆にすると、抽象度の高い内容から始めることになり、実務との接点を見つけにくくなります。

保全職の推奨取得順を示す図。第二種電気工事士で作業範囲を広げ、その後に電験三種で選任要件に対応する流れを表す
保全職の推奨取得順を示す図。第二種電気工事士で作業範囲を広げ、その後に電験三種で選任要件に対応する流れを表す

電験三種が保全実務のどこに効くのかは、設備保全に電験三種は意味がある?電気事業法の選任と実務のつながりで条文から整理しています。

令和9年度からの制度変更 — 電工学科の原則CBT移行

取得順を考えるうえで、直近の制度変更を1つ押さえておく価値があります。

電気技術者試験センターは、電気工事士学科試験について令和9年度より原則としてCBT方式へ移行すると案内しています(出典: CBT方式のご案内・確認日2026-09-07)。現在はCBT方式または筆記方式を申込み時に選択できますが、今後は原則がCBT方式に切り替わります。

CBT方式は試験会場のパソコンで出題・解答する方式で、公式サイトには第一種・第二種それぞれの学科試験の体験版が用意されています。申込方法と試験当日の流れを説明する動画も公開されています(出典: 同上)。

令和9年度からの電気工事士学科試験の方式移行を示す図。現在の選択制から原則CBT方式への切り替わりを時系列で表す
令和9年度からの電気工事士学科試験の方式移行を示す図。現在の選択制から原則CBT方式への切り替わりを時系列で表す

交替勤務のある保全職にとって、この移行はむしろ追い風です。CBT方式は実施期間の中から日を選べるため、単日の筆記方式より受験機会を確保しやすくなります。操作に不安があれば、移行前に体験版で慣れておくこともできます。

逆順・並行が向く場合

「二種電工が先」は一般的な推奨であって、全員に当てはまるわけではありません。次のような場合は判断が変わります。

社内で主任技術者の選任が差し迫った課題になっている場合は、電験三種を優先する合理性があります。選任は事業者の義務であり、免状保有者がいなければ社内で対応できないためです(電気事業法43条1項・確認日2026-09-05)。

また電気系の学科を出ている、あるいは制御盤の設計・改造を日常的に扱っているなど、すでに基礎が固まっている場合は、電験三種から入っても学習の土台に困りません。

並行して進める選択もあります。電験三種は科目ごとに試験時間が分かれる構成のため、学習の単位を分割しやすい試験です。ただし2つの試験の申込み期間と実施時期が重なると準備が薄くなるため、年間の日程を先に並べて確認してください。電験三種の方式選択と下期日程はCBT方式と筆記方式の選び方の記事で整理しています。

取得順の判断フロー図。社内の選任課題の有無、電気の基礎の有無から、二種電工先行・電験先行・並行のいずれが向くかを分岐させる
取得順の判断フロー図。社内の選任課題の有無、電気の基礎の有無から、二種電工先行・電験先行・並行のいずれが向くかを分岐させる

よくある質問

電験三種があれば電気工事の作業もできますか

できません。電気工事の作業への従事は電気工事士法が定めており、一般用電気工作物等に係る電気工事の作業は第一種または第二種電気工事士でなければ従事してはならないとされています(電気工事士法3条2項・確認日2026-09-05)。

第二種電気工事士の学科試験は何問ですか

CBT方式では四肢択一式50問・120分で、合格基準点は60点(50問中30問)、配点は1問2点です(出典: CBT方式のご案内・確認日2026-09-07)。

電気工事士試験の方式はいつ変わりますか

電気工事士学科試験は令和9年度より原則としてCBT方式へ移行すると案内されています(出典: CBT方式のご案内・確認日2026-09-07)。現在は申込み時にCBT方式か筆記方式かを選択します。

工場の保全業務なら電気工事士は必須ですか

保全業務のすべてに必要になるわけではありません。電気工事士法3条には「保安上支障がないと認められる作業であって省令で定めるもの」を除く旨の規定があり、電気工事に当たらない作業もあります(確認日2026-09-05)。自社の作業がどれに当たるかは省令の規定で確認してください。

まとめ

第二種電気工事士は電気工事士法3条に基づく作業への従事の資格、電験三種は電気事業法43条1項の選任義務に関わる免状で、根拠も働く場面も別です。工場の設備保全職なら、日々の作業範囲に直結する第二種電気工事士を先に取る順番が実務に合います。

令和9年度からは電気工事士学科試験が原則CBT方式へ移行します。交替勤務のある職場では受験機会を取りやすくなる変更であり、取得計画を前倒しで組む材料になります。

関連記事

出典

著者・監修

依田尚人YDAIコンサルティング株式会社 代表

依田尚人は YDAIコンサルティング株式会社 代表。設備保全・フィールドサービスの資格制度・公的統計・働き方について、試験実施機関・所管省庁等の公開情報を一次ソースまで確認する工程を標準として、本サイトの記事を設計・監修しています。

hozen-career.comは、YDAIコンサルティング株式会社が運営する情報メディアです。掲載情報の収録基準・出典の考え方は情報の収録基準と運営方針をご覧ください。

掲載内容に誤りや古い情報を見つけられた場合は、お問い合わせフォームよりご連絡ください。内容を確認のうえ対応します。

関連記事